初診日:2022年1月15日
CASE HISTORY
82歳男性.
数年前から足がむくみ,疲れやすくなったと感じていたが,病院嫌いであり,我慢をして生活していた.
昨年2歳年下の弟が,急性心筋梗塞のため急逝.
自分も心配になり近くのクリニックを受診すると,レントゲンにて心不全が疑われたため,専門病院へ紹介となった.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
狭心症(左前下行枝の慢性完全閉塞,左回旋枝の狭窄):枝が2本枯れ,1本には雪が積もっている
冠動脈は,心臓を栄養する血管です.
冠動脈は左右に存在し,右に1本,左に2本,計3本で構成されます.
今回は,冠動脈が2本(左冠動脈の前下行枝と回旋枝)トラブルを起こしています.
単純に,1本のトラブルより2本のトラブルの方が重症な血流不足になります.
今回の症例は,数年前から心不全の症状があり,左前下行枝はだいぶ昔に詰まってしまっています.
長い間,血流不足にさらされた心臓は,「冬眠 hibernation」という状態になり,動きが悪くなります
血流が少ないので,"省エネ"で動こうとする防御機構です.
この慢性虚血による冬眠を,枯れた木の枝に雪を積もらせることで表現しました.
≫参考Case:急性心筋梗塞「CryptoHeartFailure #1」
≫参考Case:慢性の虚血「CryptoHeartFailure #5」
虚血性心筋症:朱文金
朱文金は,赤色や藍色,黒色のまだら模様の美しい金魚です.
虚血性心筋症とは,心臓を栄養する血管(冠動脈)のトラブルによる心筋の障害です.
血流が足らない部分の心筋は,機能が低下します.
血管(冠動脈)は,木の枝のようにいくつにも分かれているため,「機能が落ちている部分」と「機能が落ちていない部分」が混在することが,虚血性心筋症の特徴です.
このような「まだらな機能の低下」が,朱文金の模様を連想させます.
僧帽弁閉鎖不全症(中等症):渦巻く流水模様
心臓の中には,逆流を防止するための弁があります.
弁の機能に異常がある状態を弁膜症と言います.
この症例では,僧帽弁という名前の弁がうまく閉じなくなっています.
「僧帽弁閉鎖不全症」という名前の弁膜症です.
しっかり弁が閉じないことで,血液が逆流してしまいます.
逆流によってできる乱流を,渦の流水模様が表現しています.
今回の症例では,上述した虚血性の変化によって,僧帽弁の機能が低下してしまっています.
収縮力が低下している:亀甲文様の三日月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
この症例は,心筋虚血によって収縮力が低下しています.
亀甲文様が象徴する概念の中に「拡大」があります.
収縮力の低下した心臓は,代償として大きくなります(心拡大).
この心拡大を,「拡大」の象徴である亀甲文様で表現しました.
また,月が欠けていることは,収縮力が部分的(心筋虚血になった部分だけ)に欠落していることを表現しています.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
Point
慢性虚血による心収縮力の低下と,その虚血に伴う僧帽弁閉鎖不全症による合わせ技の心不全.
TREATMENT RECORD
(救急搬送中...)