初診日:※年※月※日
CASE HISTORY
60歳男性.
数年前に健康診断で血圧や血糖値が高いことを指摘されたが,病院に行かず放置していた.
最近は健康診断に行っていない.
数日前から階段などで息が上がりやすいと感じるようになっていたが,最近太ったので,そのせいだと考えていた.
本日未明に突然の胸苦しさで目が覚め,一向に胸苦しさが改善しないため救急要請となった.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
狭心症(左冠動脈主幹部と右冠動脈の狭窄):枝が2本枯れ落ちている
冠動脈は,心臓を栄養する血管です.
冠動脈は左右に存在し,右に1本,左に2本,計3本で構成されます.
今回は,冠動脈が2本トラブルを起こしているのですが,場所がマズいです.
左冠動脈主幹部という,左冠動脈の根元が狭窄しているため,実質2本が狭窄していることと同じ状態です.
加えて,右冠動脈にも有意な狭窄があるため,3本狭窄している状態と同じ.
心臓の極めて広範囲の血流が低下しており,重篤な心筋虚血の状態です.
≫参考Case:急性心筋梗塞「CryptoHeartFailure #1」
≫参考Case:慢性の虚血「CryptoHeartFailure #5」
虚血性心筋症:朱文金
朱文金は,赤色や藍色,黒色のまだら模様の美しい金魚です.
虚血性心筋症とは,心臓を栄養する血管(冠動脈)のトラブルによる心筋の障害です.
血流が足らない部分の心筋は,機能が低下します.
血管(冠動脈)は,木の枝のようにいくつにも分かれているため,「機能が落ちている部分」と「機能が落ちていない部分」が混在することが,虚血性心筋症の特徴です.
このような「まだらな機能の低下」が,朱文金の模様を連想させます.
弁膜症なし:滑らかに流れる流水模様
弁膜症(弁の機能異常)はありません.
心臓の中の血流は,きれいに流れています.
収縮力が軽度に低下:胡麻文様の三日月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
胡麻文様には,健康長寿を祈る意味が込められています.
この症例は,少し収縮力が低下していますが,これから適切な治療を行うことで寿命を延ばせます.
そんな長生きの祈りを胡麻文様の月が示しています.
また,月が欠けていることは,収縮力が部分的(虚血によるダメージが大きかった部分だけ)に欠落していることを表現しています.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
Point
極めて広範囲の重症心筋虚血による心不全.
TREATMENT RECORD
(救急搬送中...)