初診日:2021年12月30日
CASE HISTORY
83歳女性.
健康診断では血圧が高いことを指摘されるも,病院へは行っていなかった.
1年ほど前から,階段や坂を歩いた時にめまいを感じるようになり,エレベーターやエスカレーターを積極的に使うようになった.
1週間ほど前から,平地の歩行で息切れが出るようになり,近くのクリニックを受診.
聴診で心雑音があり,心疾患が疑われたため専門病院へ紹介となった.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
大動脈弁狭窄症:滝の流水模様
心臓の中には,逆流を防止するための弁があります.
弁の機能に異常がある状態を弁膜症と言います.
この症例では,大動脈弁という弁がうまく開かなくなっています.
「大動脈弁狭窄症」という名前の弁膜症です.
しっかり弁が開かないことで,血流が通りづらくなってしまいます(狭窄).
大動脈弁は,心臓から大動脈へ出る出口ですから,出口がふさがりかけているようなもので,たいへんな心負荷がかかります.
狭い部分を流れる血流は,速度が速くなります.
ちょうど,ホースの先端をつまんだときに,水の勢いが増すのと同じです
弁の狭窄が生む速い血流を,滝のような流水模様が表現しています.
高血圧性心筋症(高血圧性心疾患):琉金
琉金は,丸みのあるずんぐり体形に,優雅に伸びるヒレが特徴的な金魚.
"オシャレな金魚のイメージ"として,割とポピュラーな品種です.
高血圧性心筋症(高血圧性心疾患)は,高血圧によって起きる心筋の障害.
高血圧があると,心臓は絶えずその血圧に負けないように血液を送り出さなくてはなりません.
すると,心筋はぶ厚くなり,心肥大を起こします.
さらに高血圧が続くと,徐々に心臓は疲弊し,その結果,ポンプ機能が低下することもあります.
高血圧のようにありふれた病気が心臓を肥大させて機能を低下させることを,ポピュラーで丸みのある体形の琉金で表現しました.
冠動脈(心臓の血管)に狭いところはない:綺麗に咲く梅の木
心臓を栄養する血管(冠動脈)に,狭い部分や閉塞している部分はありません.
梅の木が綺麗に咲いています.
収縮力は正常:七宝つなぎ文様の満月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
七宝つなぎには「永遠に続く調和」という意味があり,収縮力が保たれていることを示しています.
収縮力が正常な心不全は,予後がいい(寿命を短くしにくい)とされます.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
Point
重症の大動脈弁狭窄症による心不全.高血圧性心筋症を合併している.
TREATMENT RECORD
心エコー検査を施行すると,重症の大動脈弁狭窄症を認めた.
Organは,息切れなどの症状は,この弁膜症のせいで起きている可能性が高いと判断した.
一般的なうっ血性心不全で異なり,重症の大動脈弁狭窄症では利尿薬が使いづらい.
血圧が下がりやすいためだ.
(≫一般的なうっ血性心不全の治療については#2のTREATMENT RECORDで説明しています.)
よって, Organは,入院加療が安全と考えた.
入院している状態でごく少量の利尿薬を使用し,高血圧をコントロールすることで心臓の負荷を軽減することとした.
-to be continued...