初診日:2021年12月2日
CASE HISTORY
48歳女性.
生来健康で,健診でも異常を指摘されたことはない.
先月に実父が長い闘病の末に他界した.
それによるショックに加え,相続問題で兄弟との確執が生まれたことによって,最近はストレスを感じる毎日であった.
2日前から胸の重苦しさが現れた.
ストレスによるものだと考えて様子を見ていたが,一向に改善しないため,近くのクリニックを受診.
すると,直ちに大きな病院に行くことを勧められ,救急搬送となった.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
タコツボ型心筋症:蛸(たこ)
蛸(たこ)です.
Crypto Heart Failureでは,基本的に金魚が心筋の性状を表現してきましたが,今回は特別に蛸.
示す病気は,タコツボ型心筋症という特殊な病気です.
タコツボ型心筋症は,ストレスによる心筋の障害です.
失恋や近親者の死のような負のストレスが代表的で,「Broken Heart Syndrome」とも呼ばれます.
名前の由来は,動きの悪くなった心臓が,まるでタコつぼのような形状になってしまうことから命名されました.
収縮力が低下している:亀甲文様の三日月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
この症例は,タコツボ症候群によって心収縮力が低下しています.
亀甲文様が象徴する概念の中に「拡大」があります.
収縮力の低下した心臓は,代償として大きくなります(心拡大).
この心拡大を,「拡大」の象徴である亀甲文様で表現しました.
また,タコツボ症候群による心機能の低下は,心臓の尖端(心尖部)周囲に限局的に現れます. 月が欠けていることが,この部分的な心機能の低下を表現しています.
≫参考Case:急性心筋梗塞「CryptoHeartFailure #1」
冠動脈(心臓の血管)に狭いところはない:綺麗に咲く梅の木
心臓を栄養する血管(冠動脈)に,狭い部分や閉塞している部分はありません.
タコツボ症候群は心筋梗塞のような心機能の低下を起こす病気ですが,この点が大きく異なります.
梅の木が綺麗に咲いています.
弁膜症なし:滑らかに流れる流水模様
弁膜症(弁の機能異常)はありません.
心臓の中の血流は,きれいに流れています.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
Point
タコツボ症候群(タコツボ型心筋症)による心不全.
TREATMENT RECORD
Yoshiokaが心エコー(心臓超音波検査)をすると,心臓の動きが部分的に悪くなっていた.
心筋梗塞かタコツボ症候群を疑う状態だ.
その結果,冠動脈に狭窄や閉塞はなかった.
病歴としても,昨今実父の他界などからストレスがかかっており, Yoshioka はタコツボ症候群と診断した.
集中治療室へ入院とした.
-to be continued...