初診日:2021年10月22日
CASE HISTORY
42歳男性.
特に病気を指摘されたことはなかった.
最近体重が増えてきていて気になっていた.
1週間ほど前から咳が出るようになったので,常習していたしていたタバコをやめてみた.
しかし,それでも咳は治まらなかった.
数日前から,夜寝床に入ると息苦しくなり,よく眠れなかった.
今晩も寝ていたところ,息苦しさで目が覚め,息も絶え絶えで顔が真っ青になっているのところを,家族がみかねて救急車を要請.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
拡張型心筋症:コメット
この金魚はコメットという名前です.
コメットは,彗星(すいせい)という意味.
スラっとした細身の体型に,白く長い尾ヒレで水中を泳ぐ様子が,彗星を連想させたためです.
拡張型心筋症は,心臓の収縮力(縮こまる力)が弱くなっていく病気.
心臓の筋肉(心筋)が徐々に変化し,心臓の壁が痩せて薄くなってしまう,心筋自体のトラブルです.
か細くなっていく心筋と,細身のコメットのイメージをかさね合わせました.
収縮力が低下している:亀甲文様の満月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
この症例は,拡張型心筋症によって心収縮力が低下しています.
亀甲文様は基本的に縁起のいい文様なので,一見すると,収縮力低下の表現にふさわしくありません.
しかし,亀甲文様が象徴するものの中に「拡大」という意味があります.
収縮力の低下した心臓は,代償として大きくなり,これを心拡大と言います.
この心拡大を,「拡大」の象徴である亀甲文様で表現しました.
冠動脈(心臓の血管)に狭いところはない:綺麗に咲く梅の木
心臓を栄養する血管(冠動脈)に,狭い部分や閉塞している部分はありません.
梅の木が綺麗に咲いています.
弁膜症なし:滑らかに流れる流水模様
弁膜症(弁の機能異常)はありません.
心臓の中の血流は,きれいに流れています.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
Point
拡張型心筋症によって心収縮力が低下したことによる心不全.
TREATMENT RECORD
ストレッサー将軍が救急対応をする.
レントゲンや採血などから,うっ血性心不全の状態であると考えられた.
(≫うっ血性心不全については#2のTREATMENT RECORDで説明しています.)
心臓超音波検査(心エコー)では,収縮力が低下している心不全であった.
利尿薬での加療が必要であったが,急に尿が出すぎると,血圧が下がるなどして循環不全になってしまう.
と ストレッサー将軍は考え,入院管理のもと,尿の量を測りながら慎重な利尿薬の調整を開始した.
うっ血性心不全の治療は,渋滞して心臓に溜まった水分を,尿として体の外に出すことです.
しかし,水分が出すぎると,心臓がポンプで送り出す血液が足らなくなり(脱水),全身の血液の巡りが悪くなってしまうんです.
尿の量は心不全治療の大事な指標となります.
-to be continued...