初診日:※※※
CASE HISTORY
63歳女性.
生来健康で,最近は健康診断も受けていなかった.
数カ月ほど前から動悸(ドキドキする感じ)の発作があったが,休めばすぐに良くなるので病院には行かなかった.
数日前から動悸が持続するようになった.
その頃から疲れやすくなり,心肺になって近くのクリニックで診察を受けると,不整脈と胸水(肺の周りの水)の貯留がわかった.
心不全の状態が疑われたので大きな病院へ紹介となった.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
肥大型心筋症:蘭鋳(ランチュウ)
この金魚は蘭鋳(ランチュウ)と言います.
ずんぐりとした体型に,頭部には肉瘤が発達しています.
(この肉瘤がライオンのたてがみを彷彿とさせるためか,英名は「ライオンヘッドゴールドフィッシュ」.)
肥大型心筋症は,心臓の壁が分厚くなってしまう病気です.
壁が分厚くなると,心臓はしなやかに伸びて拡がることが難しくなります.
柔らかいゴム風船は膨らませやすいですが,硬いゴム風船は膨らませるのが大変ですよね.
心臓も同じで,肥大型心筋症では,心臓の膨らみが悪くなり,血液を送り出す量が減ってしまいます.
蘭鋳の肉瘤は,アンバランスに壁が分厚くなる肥大型心筋症を彷彿とさせます.
心房細動:曇天(赤)
心房細動は,不整脈の一種です.
心房と呼ばれる心臓の上部にある部屋が小刻みに痙攣しています.
大きく分けて3つの弊害があります.
- 脈がとても速くなる(頻脈)
- 心臓が疲れて脈が遅くなる(徐脈)
- 心臓に血栓ができる ⇒脳梗塞のリスク
このように,さまざまなリスクをはらむ心房細動を,赤く不気味な雲が表現します.
- 脈がとても速くなる(頻脈)
- 心臓が疲れて脈が遅くなる(徐脈)
- 心臓に血栓ができる ⇒脳梗塞のリスク
【隠し要素】水引:心房細動による頻脈
今回の心電図をみると,脈拍数が速いことがわかります.
頻脈と呼ばれる状態です.
収縮力は正常:七宝つなぎ文様の満月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
七宝つなぎには「永遠に続く調和」という意味があり,収縮力が保たれていることを示しています.
収縮力が正常な心不全は,予後がいい(寿命を短くしにくい)とされます.
しかし,今回の症例のような肥大型心筋症の場合,はじめは収縮力が正常でも徐々に収縮力が低下することがあるので,必ずしも予後がいいとは言い切れません.
冠動脈(心臓の血管)に狭いところはない:綺麗に咲く梅の木
心臓を栄養する血管(冠動脈)に,狭い部分や閉塞している部分はありません.
梅の木が綺麗に咲いています.
弁膜症なし:滑らかに流れる流水模様
弁膜症(弁の機能異常)はありません.
心臓の中の血流は,きれいに流れています.
Point
肥大型心筋症によって膨らみが悪くなった心臓が,心房細動による頻脈をきたしたことによる心不全.
TREATMENT RECORD
(救急搬送中...)