初診日:2021年12月17日
CASE HISTORY
61歳の男性.
生来健康であった.
体力には自信があり,還暦を迎えた後も仕事を続けていた.
しかし,2ヶ月前から疲れやすいと感じるようになった.
簡単な作業でも息が上がるようになり,職場と相談して時短で働くようになっが,症状は徐々に進行していった.
2-3日前から,高い場所のものをとったり,靴を履いたりするなどの日常の行動でも息が上がるようになった.
「さすがにそろそろ病院に行かないとまずいかな」と思っていた矢先,仕事中に急に息苦しくなり,救急車を要請した.
※フィクションです.
CASE SUMMURY
心臓サルコイドーシス:出目金
出目金は,クリっとした目が特徴の金魚で,突然変異で生まれたとされています.
サルコイドーシスは(心臓に限らない)全身の病気です.
生体の防御反応である免疫反応が異常を起こして,さまざまな自分の臓器を障害してしまうことで発症します.
サルコイドーシスは心臓を障害することもあり,障害を受けた心筋は機能が低下してしまいます.
これが心臓サルコイドーシスです.
サルコイドーシスは眼を障害することがあり,自己免疫の異常という突然変異である点も重ねて,出目金で表現しました.
収縮力が低下している:亀甲文様の三日月
心臓はポンプの臓器です.
"ギュッと"縮こまる力(収縮力)は,心不全の予後や治療法に影響を与えます.
この症例は,サルコイドーシスによって心収縮力が低下しています.
亀甲文様が象徴する概念の中に「拡大」があります.
収縮力の低下した心臓は,代償として大きくなります(心拡大).
この心拡大を,「拡大」の象徴である亀甲文様で表現しました.
また,サルコイドーシスの心機能の低下は,免疫が攻撃した部分だけに現れます. 月が欠けていることが,この部分的な心機能の低下を表現しています.
≫参考Case:急性心筋梗塞「CryptoHeartFailure #1」,慢性的虚血「CryptoHeartFailure #5」
冠動脈(心臓の血管)に狭いところはない:綺麗に咲く梅の木
心臓を栄養する血管(冠動脈)に,狭い部分や閉塞している部分はありません.
梅の木が綺麗に咲いています.
弁膜症なし:滑らかに流れる流水模様
弁膜症(弁の機能異常)はありません.
心臓の中の血流は,きれいに流れています.
洞調律(正常なリズム):晴天
心臓は,リズミカルに鼓動を打ちます.
規則正く適切な速度のリズムを打つのが,正常な心臓です.
洞調律とは,"洞結節"という心臓の発電所が指揮をする調律(リズム).
洞結節は,心臓公認の指揮者です.
洞結節が指示する洞調律は,正常なリズムということです.
【隠し要素】水引:1度房室ブロック
今回の心電図をみると,1度房室ブロックになっています(超マニアックなので非医療者の方はスルーでok).
房室ブロックに関しては,今後別の作品で解説します.
Point
サルコイドーシスによる心収縮力の低下による心不全.
TREATMENT RECORD
BANILIZOが検査を施行すると,うっ血性心不全の状態であることがわかった.
患者さんは,これまで心臓はおろか,病気はただの1つも指摘されたことはない.
しかし,心臓超音波検査(心エコー)を施行すると,心臓の収縮力が低下していた.
原因も気になるところであるが,まずはうっ血状態を改善せねばならないため, BANILIZOは利尿薬で治療を開始した.
(≫うっ血性心不全については#2のTREATMENT RECORDで説明しています.)
-to be continued...